
南雲 颯太(なぐも そうた)
1999年東京都生まれ。幼稚園の頃からサッカースクールに通い始め、4年生からFOOTBOZE FUTSALでフットサルに本格的に取り組む。サッカーも並行していたが中学以降はフットサルに専念したフットサルネイティブ。多摩大学体育会フットサル部では全日本大学選手権で優勝。立川・府中アスレティックFCに入団し、Fリーグデビューを果たす。2024年にはフットサル日本代表に初選出。左膝前十字靭帯損傷からの復帰を目指す。ポジションはアラ。
小柄な少年が出会ったフットサルという世界

東京都世田谷区で生まれ育った南雲颯太。友達と一緒にサッカーボールを追いかける、どこにでもいる少年だった。しかし、幼少期からFOOTBOZE FUTSALのスクールへ通っていたことから、フットサルへと重心が移っていた。
「人数が少なく、ピッチも狭いのでボールに触れる機会が多くて、ゴールもたくさん決められる。子供心にフットサルのほうが楽しいと思いました」。
中学に上がる頃には完全にフットサルに専念。育成年代からフットサルを磨き続ける、いわゆるフットサルネイティブとして成長していく。そこには、FOOTBOZE FUTSALの存在が大きい。
FOOTBOZE FUTSALで育まれたフットサルネイティブ

FOOTBOZE FUTSALは、フットサルの育成年代に特化したフットサルクラブ。
代表の豊田幸夫氏はじめ、熱心な指導者が情熱を注ぎ多くのフットサル選手を輩出している。中学ではサッカー部に入らずフットサルに集中。高校時代には全国大会でも活躍。2016年の第3回全日本ユース(U-18)フットサル大会では、決勝で帝京長岡高校に惜しくも敗れたものの、その卓越した視野とパスセンスで注目を集めた。
大学は多摩大学へ進学。体育会フットサル部でプレーし、2019年には全日本大学フットサル大会で優勝、日本一となった。
そしてフットサル部でのプレーと並行し、Fリーグの立川・府中アスレティックFCの練習に参加。そしてトップチームに入団。大学生として学びながら、憧れだったトップリーグの舞台で戦うという挑戦が始まった。
当初はプレースピード、フィジカルなど全てに差を感じていたが、トレーニングを積み重ね出場機会を掴み、Fリーグの中で存在感を放つようになっていく。
フットサル日本代表という夢の舞台へ

2022年にチームが立川アスレティックFCとなり、メンバーが変わると、攻守において南雲は重要な存在となる。守備と攻撃をつなぎ、重要な得点を決めるだけでなく、それ以上に多くのパスでチームのゴールをお膳立てした。
「天使のパス」と評される南雲のアシストは、得点者が最も蹴りやすいタイミングとコースで届けられる。フットサルには公式なアシスト記録がないが、彼のパスがいくつものゴールを生み出してきたことは、誰もが認めるところだ。
その努力の甲斐もあり2024年8月。ついに南雲の名前が、フットサル日本代表メンバーリストに載る。高橋健介新体制となったフットサル日本代表の一員として、キルギス遠征へと旅立った。
しかし、代表での出場時間はわずかだった。南雲自身も冷静に受け止めていた。「実力不足、それだけです」と。その言葉には悔しさがにじんでいたが、同時に代表に選ばれるという喜び以上に、もっと高いレベルでの挑戦が待っていることを彼は知った。
代表に選ばれたことは、もちろん良かったし、幼い頃から指導を受け続けてきたFOOTBOZEの豊田幸夫監督や、応援してくれるファンが喜んでくれて嬉しい。それ以上に南雲は、自分自身に足りないものを噛み締めていた。
自分の今の立ち位置を確認する機会にもなった。
大怪我とリハビリ 見つめ直す時間

その直後、選手生命を脅かす出来事が起こる。Fリーグ通算100試合出場を達成したわずか2試合後の2024年12月28日。試合中の接触プレーで左膝前十字靭帯を損傷するという大怪我を負った。
これまで積み重ねてきたキャリアが一度止まる。立川アスレティックFCが優勝を目指して戦う今シーズン、南雲の姿はベンチにはない。だが、彼は諦めなかった。リハビリに励みながら、試合中はスタンドからチームを見守り、ハーフタイムや試合後には選手たちにピッチレベルでは得られない視点でアドバイスを送る。
一歩下がってチームを見つめたことで、彼はまた新たな学びを得た。「自分が出ていた時は気付けなかったことに、今は気付けている」。この経験も、きっと彼を強くする。
それでも、挑戦は続いていく

今、南雲颯太は再びピッチに立つその瞬間を目指している。目標は明確だ。もう一度、優勝を目指すクラブで勝利に貢献すること。再び日本代表に戻ることだ。
彼がピッチに戻る日を心待ちにしている人がいる。怪我をした時に悲しんでくれた人たちを、今度は笑顔に変えたい。そのために、これまで以上にトレーニングに励み、チームメイトと向き合い、何よりも自分自身と戦っている。
南雲の挑戦は、まだ始まったばかりだ。あの小さな少年が描いたフットサルの夢は、いまも彼の心を突き動かし続けている。
FOOTBOZE FUTSAL / 多摩大学体育会フットサル部
画像提供:立川アスレティックFC