
山田 昭典 (やまだ あきのり)
府中市で地域密着の不動産業を営む、府中不動産株式会社代表取締役・山田昭典。
1964年、神奈川県鎌倉市に生まれ、学生時代を狛江市で過ごし、都立府中東高校を卒業後、二輪メーカー、自動車ディーラー、医療写真関係会社を経て、2002年に不動産業の道に入った。
現在は、府中市の宅建協会支部長や居住支援協議会副会長など、地域のために多くの役割を担っている。

「不動産って、派手な仕事じゃないんですよ。だけど、困ってる人の力になれた時は、やってて良かったなって思うんです。」
そんな堅実な山田にも、もうひとつの顔がある。
それは、モータースポーツの競技者を支えるスポンサーとしての顔だ。
一通のメールから始まった縁

「たまたまメールチェックしてたら、見慣れない名前があって。正直、最初は怪しい営業メールかなと思ったんですよ。」
送り主は、レーシングライダー・関口太郎。府中市出身の世界GPライダーだ。
メールには、スポンサー支援を求める熱い想いが綴られていた。
「ウチは家族でやってる小さな不動産会社。正直、そんなに余裕はない。だけど、何か引っかかるものがあってね。会ってみようって思ったんです。」
実際に会った関口は、まっすぐな目で自分の夢を語った。
派手さや甘い言葉はない。ただ、純粋に走り続けたいという情熱だけがそこにあった。
「この子は本気だなって。
それなら、自分のできる範囲で応援してみようと思ったんです。
もうね、損得とかじゃないんですよ。」
こうして始まったスポンサー活動は、2006年。関口が世界GPを転戦していた時だった。
小さな会社の、小さなステッカーの重み

世界各地を飛び回る関口のマシンに貼られた、府中不動産のステッカー。
それは広告効果を期待してのものではなかった。
「正直ね、府中の小さな不動産屋の名前なんて、スペインだのイタリアだので誰も知らない(笑)。
だけど、太郎が頑張ってる限り、ウチも一緒に戦ってるんだって思えたんです。」
最初は遠くから応援するだけだったが、次第に現地のレースにも足を運ぶようになった。
宮城のスポーツランドSUGO、栃木のモビリティリゾートもてぎ、三重の鈴鹿サーキット……。
「レースに行くとね、ほんと家族みたいなんですよ。
太郎だけじゃなくて、メカニックやスタッフ、周りにいる人たちみんなが一丸になってる。
そんな空気に触れてると、自然とこっちも熱くなるんです。」
喜びも、悔しさも、家族のように
「転んだら、自分も心が痛い。
ゴールしたら、涙が出るくらい嬉しい。
スポンサーって言っても、いつの間にか、家族みたいなもんですよ。」
そんな関係性の中で、嬉しい出来事もあった。
関口の紹介で、不動産の相談が舞い込んできたのだ。
「お金だけじゃない。人と人とのつながりって、こういうことなんだなって思いましたね。」
スポンサーと競技者。
単なる支援する・されるの関係を超えて、互いをリスペクトし合う本物の絆が、そこには育っていた。
応援する理由

アラフィフとなった今も、若いライダーたちに混じって戦い続ける関口太郎。
年齢や環境に屈することなく、ただひたむきに走る姿は、山田にとっても刺激だ。
「正直、俺も年取ってきたなって思うことあるんです。
でも、太郎を見てると、まだまだ頑張らなきゃなって思えるんですよ。」
小さな不動産会社と、世界を舞台に戦うレーサー。
交わるはずのなかったふたつの人生は、一通のメールから奇跡のように重なった。
今日もどこかのサーキットで、関口太郎のエンジン音に耳を澄ませながら、
山田昭典は静かに、しかし確かに、自分もまた挑戦しているのだ。
取材協力:府中市の不動産・賃貸・売買・賃貸管理は府中不動産株式会社