
伊藤 広樹(いとう ひろき)
1991年、長野県出身。ブラジル人との交流が盛んな地域で育ち、幼少期より自然とフットサルに親しむ。ボアルース長野、湘南ベルマーレ、ヴォスクオーレ仙台などFリーグで活躍後、FC NAKAIやZOTT WASEDA、あしざるFCなどでもプレー、2025年よりデルミリオーレクラウド群馬に入団。現役選手として活躍する傍ら、「ケケイッソドリブル塾」を主宰し、未来のヒーローを育成する挑戦を続けている。
地元から始まった、フットサルとの出会い

伊藤広樹の原点は、長野県の自然と、身近にいたブラジル人たちの存在だ。フットサル文化が根づいた地域で育ち、小さなコートで技を競い合う楽しさを覚えた。
「サッカーはチームスポーツだけど、フットサルのほうが人数が少ない分ボールに触れる機会も多い。それが自分には合っていた」
そう語る伊藤は、ボールを持った時のワクワクを、今も変わらず感じている。
地元クラブ・ボアルース長野の立ち上げメンバーで、湘南ベルマーレ、ヴォスクオーレ仙台でFリーガーとしての実績を重ねていった。復帰したボアルース長野ではFリーグディビジョン2優勝と入れ替え戦に勝利して、ディビジョン1昇格に貢献した。
「勝利」と「発信」──FC NAKAIでの大きな挑戦

転機となったのが、FC NAKAIへの加入だった。ペスカドーラ町田で活躍した中井健介氏が立ち上げたこのプロジェクトは、Fの頂、つまりフットサル全日本選手権優勝を目指して活動。「負けたら解散」というコンセプトと、YouTubeを通じたドキュメンタリー配信で注目を集めた。
「ただ勝つだけじゃない。見てくれる人たちの心を動かす戦いがそこにはあった」
伊藤は主力としてゴールを量産し、チームの躍進を支えた。プレーで魅せることで、フットサルの可能性を広げていく──そんな使命感が芽生えた時間でもあった。
技術と人間力を育てる──ZOTT WASEDA、あしざるFCでの経験

その後、関東リーグ屈指の名門ZOTT WASEDA FUTSAL CLUBへ。コロナ禍という困難な時期だったが、そこで得たものは大きかった。
「チームの理念や取り組みから、本当に多くの刺激を受けました」
続いて加入したのは、YouTubeなどでも人気を集める「あしざるFC」。競技フットサルを日本一のスポーツに──そんなコンセプトのもとで、全国に“面白さ”を届ける活動にも取り組んだ。
その競技チームがバディランツァーレと合併し、あしざるランツァーレとして再始動する中で、伊藤はより自分の活動と距離感の合う道を選び、現在はデルミリオーレクラウド群馬で競技を続けている。
30歳を過ぎて技術や経験はまだまだトップクラス。ただFリーグでのプレーは遠征が多く、その名誉と引き換えに犠牲にするものも多い。


ケケイッソドリブル塾──育てる挑戦、繋ぐ未来

現役選手でありながら、伊藤は自身の経験を次世代に伝える活動にも力を入れている。その象徴が「ケケイッソドリブル塾」だ。
「サッカーでも、フットサルでも、ドリブルで自信を持てた時、子どもたちは本当に目が輝く。そんな瞬間を、もっと増やしたい」
このスクールでは、勝ち負け以上に“個の育成”に重点を置く。自分の武器を持ち、自信を持ってプレーすること。そして試合で活躍するために。それがフットボールの楽しさの原点だと信じている。
千葉、埼玉エリアを拠点に活動を続け、これまで数多くの子どもたちが伊藤の指導を通じて「ボールを持つことが楽しい」と思えるようになった。なかにはJリーガーやサッカー指導者の子どもも通っているというから、その理論や技術は本物だ。
伊藤広樹にとっての「挑戦」とは
「挑戦って、ただ高い場所を目指すだけじゃない。自分を信じて、変化し続けることだと思うんです」
プレーヤーとして、指導者として、そして一人の“伝える人”として。伊藤広樹の挑戦は、これからも変わり続けていく。
ゴールに向かってドリブルで仕掛けるように、目の前のチャンスに全力で向き合う。その姿勢が、次の世代の“挑戦者たち”を動かしていく──。